三浪の忘れ物サミット

世の中の忘れそうな、わざわざ考えるほどじゃないことだけ真剣に考える

今のアイドルシーンは確実に早稲田大学が生み出した

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色々考えてるうちにこの世界の真理に辿り着いてしまった。

先に言ってしまうと、早稲田大学にやっと結びつくのは最終章だけなので、音楽的背景どうでもいい人は最後だけ読めば幸せになれる

今の女性アイドルシーンとは

AKB48が軍隊要素を取り入れたRIVERで爆発した2009年末以来、女性アイドルが日本音楽シーンを牽引し始め早11年。

ヒットチャートが実際に多くの人に聴かれる音楽と乖離し始めるという景気と日経平均株価のような関係になり、

音楽番組がこぞってランキングをダウンロードやストリーミング系に変えるという追い出し施策が行われた。

その結果、現在ではAKB48の覇権感は落ち着いた。

しかし、一方で乃木坂46、欅坂46、日向坂46、と46系列が絶大な人気を誇っている。

「そりゃ白石麻衣いたし、皆美人だし。」と外見のおかげだけと考える人もいるだろうが、

レコチョクのダウンロード数だけで算出した2019年アーティストランキングでは、

なんと乃木坂が9位にランクインしている。

12位のKing Gnuより上と言うとよりすごく聞こえるのではないか。

ちなみに活動の少なかった欅坂46も33位にランクインし、48グループはAKB48のみが40位にランクインしている。

recochoku.jp

このように、CDをおまけにして結果的にアイドルをランキング外に追いやった秋元康は、物の見事に新たなランキングにも適応してみせた。

では何が乃木坂46や欅坂46をチャートにランクインする“アーティスト”にさせたのか。

ここからはさも事実かのように暴論を振るう。

乃木坂46の音楽的変化

乃木坂46の印象がデビュー当初と違う人もいるのではないか。

実際にぐるぐるカーテン、おいでシャンプー、走れ!Bicycle、と3rdシングルまでの乃木坂46は、

純朴な、あどけない普通の女の子達が、短いスカートや難しいダンスなどの無理をせず幸せそうに歌う、というどこか懐かしいものだったと記憶している。

楽曲の方向性としても、フレンチポップぽい古臭い音質のストリングスやパーカッションを使用するなど、作編曲の段階からアイドルの原点回帰を意図しているよう感じた。

しかし、4つ目のシングル「制服のマネキン」で大きな転機を迎えた。

(サビ1:04〜)
youtu.be


この曲は、ダンスこそ古臭さ、それまでの乃木坂46に感じるナンセンスなダサさもあったが、歌詞はそれまでの純朴な制服姿の自身を全否定するようなアンチテーゼだった。

この曲は乃木坂46のシングルとして初めて初週20万枚を超えるヒットとなった。

そして、売れただけではなく、その後の乃木坂46以外にも大きな影響を残した。それが欅坂だ。

制服のマネキンが与えた影響

この曲が欅坂46の原型になったと考察するような記事は既にあり、実際に秋元さんは試しに出した制服のマネキンのヒットで市場に新たな可能性を感じたのだろうと思う。

企業が商品の差別化でものが売れなくなり、ブランドジャーナリズムなどと企業自体が思想や哲学を打ち出して消費者の共感を獲得することで、エンゲージメントを高め関係を強固にしていく、というマーケティング手法は音楽業界にも起きていると個人的に思っている。

欅坂46やUVERなどはその好例ではないか。

奇しくも軍隊要素を入れたRIVERでAKB48が売れてから7年後、今度は欅坂46に軍隊の恰好をさせ社会問題を起こした秋元さん。時折世の中への主張を衣装からぶつけてくるのが秋元さんのやり方なのか。(セーラー服を〜、AKBの制服が邪魔をする、など)

そして制服のマネキンに欅坂46のルーツを感じる圧倒的なもう1つの理由は音楽性である。

制服のマネキンの音楽性

制服のマネキンは少し古臭いダンスミュージック的な楽曲で、メロディはマイナー調、コードは4563の循環進行というダンス系と親和性の高いもので4つ打ちのドラムに対してシンセが16分音符多めで動いている。

メロディはサビですら上下が非常に少なく、符割りのリズム感で聴かせている。

このリズムで聴かせるマイナーメロディとダンサブルなアレンジの組み合わせが売れたことが、欅坂46の楽曲スタイルにも繋がっていると思われる。

ちなみにこの組み合わせは乃木坂46の方向性にも確実に影響を与えており、

2018年の「シンクロニシティ」や「帰り道は遠回りしたくなる」などの代表曲は、同じ音程をAボタン連打するようなAメロBメロが印象的で、

サビも印象的なリズムの符割り(かっえーりみっちーはー♬というたった6文字の強烈なリズムの符割りとその応用だけでサビが構成されていて6音思いついた時点で勝ちに思える)をリフレインすることでサビとして聴かせるという極めて今っぽい曲となっている。

(サビ1:04〜)
youtu.be


今っぽいというか、乃木坂46自身が今っぽさと我々が思う曲調を新たに創り出している1組だ。

この今の乃木坂スタイルを芽吹かせたのが「制服のマネキン」だろう。少なくとも私ならそう分析する(恋をするなら♬というメロディよりリズムが心地いい7文字の符割りの応用だけでサビ作られてる。多分。)

乃木坂46の楽曲は多くの事務所が参加するコンペで採用される。

そのうえで、作曲家は過去を分析し、それまでの楽曲、世界観から外れ過ぎない範囲で曲を作っていく。

したがって、バトンを渡すように少しずつ幅を拡張していった結果が今の乃木坂の音楽性なのだ。

実際に、2015年2016年シングル「今、話したい誰かがいる」「ハルジオンが咲く頃」を作曲したAkira Sunset氏は、

「制服のマネキン」が印象的で、アイドルぽくなくていいんだ、と影響を受けたとインタビューで語っており、

また、サビは冒頭2小節が決まれば後はその応用で作れる、と2小節の符割りを重んじる作曲方法であることも語っており、これが極めて似たような符割りの繰り返しで構成する、米津玄師(Lemonとかまちがいさがし)などにも通ずる今ぽいサビを生み出していると私は考えている。

ちなみにボカロが飛ばされないようワンフレーズの中毒性で勝負するという土壌だったのも、米津玄師らを現代へフィットさせる要因になったと思う。

正直、私も音楽を作るうえで非常に痛感している部分であり、無駄にメロディを優先すると90年代のような古臭い、使い古されたダサいメロディになるので、今っぽさの1つのルーツにおそらくなっている「制服のマネキン」は天才の偉業だと思っている。

AKBと大きくついた差は、EDM的4ビートの上で短いフレーズのリフレインでサビを構成するよう楽曲のピントを時代に合わせたことが大きいのではないか。

AKBは「RIVER」から「真夏のSounds good!」「everyday、カチューシャ」などAKBらしさともいえる曲調を形作った井上ヨシマサ氏を2019年年間CD売上1位となった「サステナブル」まで起用し続けており、

乃木坂には1曲も提供していないことからも明確に音楽性として棲み分けが意識されてるよう感じる。

「everyday、カチューシャ」のサビが16小節でようやく1つの塊になる歌謡曲寄りなことからも、冒頭6音だけで繰り返される乃木坂の音楽性とは本質的に異なり、ややガラパゴス化している。

余談だが、今Spotifyの急上昇チャートを賑わせているボカロ出身のayase率いるYOASOBIも、「制服のマネキン」や欅坂のアレンジから影響を受けているのではと推察している。

ayaseの出世作となった「幽霊東京」という曲はよくよく考えると特に「制服のマネキン」や欅坂のピアノとシンセによるダンサブルなアレンジに近いものを感じる。

では、この今のもはやアイドルシーンだけに留まらないポップスの先駆けとなった「制服のマネキン」を作ったのは誰なのか。

杉山勝彦という天才

そう、それこそが杉山勝彦氏という天才だ。

wikiによれば「制服のマネキン」は6時間でデモを作ってしまったらしい。

しかも乃木坂46の印象を変えるという依頼があったわけではなくチャレンジで作ったらしく、杉山勝彦氏が変化をもたらしたのだ。

サビに関しても音程よりもリズム感を重視した結果と述べており、全て意図して時代を築いている。

2019年4thアルバムのリードトラック「ありがちな恋愛」のサビに至ってはサビ冒頭たった3音「れんあ」のリズムと音程の応用(高低の反転など)だけでサビ全体を構成していると見ていいだろう。間違いなく乃木坂らしさを築いたのは杉山勝彦氏だ。

(サビ0:39〜)
youtu.be
他にも16thシングル「サヨナラの意味」やエビ中の「禁断のカルマ」「仮契約のシンデレラ」、中島美嘉やジャニーズなど様々作っている。

そして、なんとこの方は早稲田大学理工学部建築学科出身だった。

これだけでも早稲田大学グッジョブすぎるが、

極めつけに、杉山さんは2006年に早稲田祭ステージにOBとしてアカペラグループで出演した際にラッツ&スターの佐藤善雄さんにスカウトされこの世界に入ったらしい。

やばいな。

作為的に要約すれば、早稲田大学がなければ杉山さんは作曲家になっておらず、「制服のマネキン」は世に出ておらず、欅坂46は生まれず、今の乃木坂46の音楽性も生まれず、日本のアイドルシーンはヒットチャートを賑やかせることもなかったかもしれないのだ。


こう考えると、早稲田大学は確実に今のアイドルシーンを生み出した最大の功労者と言っても過言。